みんなの声

NPO法人による移住コンシェルジュ
~移住者が移住者を呼び込むまち上士幌~

川村昌代さん(上士幌コンシェルジュ)平岡崇志さん(上士幌町役場商工観光課)

道内でも比較的早くから移住者受け入れを積極的に進めてきた上士幌町。2010年にNPO法人〈上士幌コンシェルジュ〉が設立され、2011年に移住者に対する窓口業務を担当している。役場とNPO、さらに先輩移住者の連携は、移住を考えている人たちにとって心強い存在だ。

川村昌代さん
(上士幌コンシェルジュ)
平岡崇志さん
(上士幌町役場商工観光課)

  1. NPO法人を設立するまでの経緯を教えてください。

    まずは役場内に窓口設立、
    そしてNPO法人の設立へ

    〈平岡さん〉上士幌町では移住者受け入れのための取り組みを、道内でも比較的早い時期から行ってきました。具体的には2005年度から町内への移住や、他地域と上士幌の「二地域居住」を推進するため、まず役場内にワンストップの窓口を設けました。移住したいと考える人が持つさまざまな要望に対し、1つの担当部署で対応できるようにしました。翌年度には空いている教員住宅などを使って、移住体験モニターの受け入れも始めました。こうしたことを下地として、役場と民間が連携し補完し合える体制を作ろうと、NPO法人の設立が考えられたのです。

  2. 〈上士幌コンシェルジュ〉ではどんな活動をしているのですか?

    行政ではできない範囲の活動で
    移住者のお手伝いを。

    〈平岡さん〉行政による移住相談では、特定の業者や人を紹介することができないことや、数年で担当者が異動してしまうといった問題もあります。民間団体であるNPOが窓口となることで、こうしたことが解消できます。
    〈川村さん〉上士幌コンシェルジュ立ち上げ後、それまで商工会が行っていた地元産品のネットショップの運営を任されるとともに、ふるさと納税の申込者に対する商品の発送業務を請け負うようになりました。これらがNPOの活動を維持するための収入源で、移住者支援の業務は、そうした収益を上げるものとは別な位置付けでやっています。また独自事業として観光案内業務も行っています。

  3. 移住者を支援する取組にはどのようなものがありますか?

    移住を考えている方に、
    短期から長期の移住体験を支援。

    〈平岡さん〉移住に先立って、まずは上士幌町での暮らしを体験してもらうことが重要と考え、そのための施設を用意しています。1週間から1ヶ月までの短期滞在用、1ヶ月から1年までの中長期滞在用に分け、それぞれの用途に合わせた住宅が計8棟あります。最近は長い滞在を希望する人が増える傾向にあります。住宅の利用料金は低く抑えていますが、あくまでも上士幌町での暮らしを考えるための施設ですので、観光が主目的での利用はお断りしています。また滞在中に日誌を付けていただいたり、マスコミから取材があった場合に協力していただくなどの条件もあります。

  4. 移住体験に来る人へはどのような対応をしていますか?

    不便さを含めて
    移住体験をしてもらいたい。

    〈川村さん〉私たちは移住支援といっても、あまり手を出し過ぎないようにしています。こちらから何かをしてあげるのではなく、相談されたらそれに対応するという姿勢です。こんな人に会いたいといった要望があれば、それにお応えします。町村によっては空港までの送迎をするところもあるようですが、それもしていません。不便さを知ってもらうのも体験のひとつということですね。

  5. 移住者にはどのような方が多いですか?

    リタイアしてからの方も、
    現役でお仕事されている方も。

    〈平岡さん〉2005年度からの10年間で町内に移住した人が59組116人、二地域居住として住まいを構えたのが5組7名です。ただしこれは上士幌コンシェルジュのワンストップ窓口を経由した数字で、はっきり面識があって、こちらから取材などへの応対にも協力してもらえる人です。これ以外に役場やNPOと関わりをもたずに移り住む人も少なからずいるので、実際の人数はもっと多くなります。移住者の大体2割くらいがすでにリタイヤした世代ですが、それ以外では現役で仕事をしている人も少なくありません。役場では地元情報を収集して職業紹介も行っているので、農業法人や林業関係などへの就職を後押ししました。

  6. 移住したシニア世代の方々はどの様な移住ライフを送られているのでしょうか?

    趣味や特技を活かした活動など、
    さまざなな移住スタイル。

    〈川村さん〉移住前の相談にしても、シニア世代だから特別という印象はあまりありません。強いて言えば病院について確認されることがあるかな、という程度です。リタイヤしたけれど、こちらに来てまだ働きたいという希望もあります。農業の町ですから短期的な仕事は結構あり、今までにない体験を楽しむ人もいます。あとは人との繋がりに関する心配ですね。田舎に来ると周囲との接点が減ると思われがちですが、いろんなところから声が掛かることはむしろ多く、いい意味で「こんなはずじゃなかった」と言う人もいます。シニア世代の移住ライフの過ごし方はいろいろです。椅子やテーブルを自分で作るなど趣味の世界を拡げたり、前職や特技を生かして語学教室、障害者支援などの活動に参加したりする方がいます。そのほか、山菜採りや釣りなどを楽しまれている方もいます。

  7. 上士幌町は手厚い子育て支援制度を設けていますがこのことについてはどのようにお考えですか。

    自然豊かな環境で
    子育てを望む方は多い。

    〈川村さん〉2011年の東日本大震災をきっかけとして、子育ての環境について真剣に考える人が多くなったようです。密集した都会を避け、自然豊かな場所での暮らしを望む人は多いと感じます。その点で上士幌町は自然環境の良さに加え、子育て支援の制度が充実していることも魅力となっているようです。
    〈平岡さん〉上士幌町は、ふるさと納税による基金を活用して手厚い子育て支援制度を実現しています。2015年に開園した認定こども園「ほろん」は利用料が無料、高校生世代までの医療費を全額助成、子育て世代への住宅購入の助成など、魅力的な制度だと思います。

  8. 先輩移住者にもいろいろな方がいるそうですね。

    先輩移住者は、後輩たちの
    良き相談相手になってくれます。

    〈川村さん〉上士幌町では先輩移住者の存在がとても大きいです。1999年に兵庫県から移り住んだ女性のS.Kさんは移住者の中で先駆け・中心的な存在で、あとから来る移住者の良き相談役になってくれています。月に1度、 この方たち移住者が中心となって、料理を持ち寄り、その月生まれの人のお祝いをする会が、もう10数年も続いています。そこに体験移住として滞在中の人が参加することも多く、大事な交流と情報交換の場となっています。町役場・上士幌コンシェルジュ・先輩移住者という三者の連携が上士幌ではとてもうまくいっていて、それが多くの移住者を呼ぶことに繋がっていると思います。

  9. 先輩移住者K.Mさんに聞く上士幌ライフ

    カフェのマスターをしながら
    オープンな人間関係。

    長らく広島に住みながら南阿蘇の別荘地に長らく通い、ゆくゆくはそこに住むことを考えていました。その一方で妻ともども、北海道にも魅力を感じていたんです。2015年に上士幌で1ヶ月半の暮らしを体験し、そのあいだにちょうど手頃な空き家が出たというので、パッと移住を決めてしまいました。上士幌の魅力は何と言っても「人」です。いろんな個性が集まっていて、互いに声を掛け合ってオープンな人間関係ができる。来たときは60歳でしたが、若い人が来たなんて言われてちょっとうれしかったことを覚えています。現役時代にコーヒー豆の販売の仕事に関わっていたので、今は〈かみしほろ情報館〉の喫茶コーナーでカフェのマスターをやっています。

TOP